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四季の組
[シキノクミ]

ジャンル	地唄・箏曲 箏組歌 秘曲・別組
作曲者	八重崎検校？
調弦	平調子
唄	[若菜（春）] 一　春（はる）の野（の）にうち群（む）れて　若菜摘（わかなつ）みつつもろびとの 　　万代（よろずよ）祝（いわ）ふ心（こころ）をば　君守（きみも）る神（かみ）や知（し）るらん 二　風（かぜ）になびく青柳（あおやぎ）の　緑（みどり）の糸（いと）を繰（く）り返（かえ）し 　　長（なが）き日陰（ひかげ）に縒（よ）りてなほ　幾世（いくよ）の春（はる）を経（へ）ぬらん 三　春（はる）はなほ我（わ）が宿（やど）に　咲（さ）ける桜（さくら）の花盛（はなざか）り 　　千歳（ちとせ）や千歳見（ちとせみ）るとても　飽（あ）かぬ心（こころ）ぞのどけき 　　　　[橘（夏）] 一　雲井（くもい）の庭（にわ）に色変（いろか）へぬ　花橘（はなたちばな）にほととぎす 　　千世（ちよ）を鳴（な）らして久方（ひさかた）の　空（そら）にぞ声（こえ）の聞（き）こゆる 二　葉替（はが）へせぬ松（まつ）の蔭（かげ）　常磐（ときわ）にすみて岩（いわ）が根（ね）に 　　流（なが）す泉（いずみ）の底清（そこきよ）く　水（みず）は緑（みどり）の影（かげ）ひたす 三　蝉（せみ）の小川（おがわ）に木綿（ゆう）かけて　今日（きよう）水無月（みなづき）の祓（はら）ひする 　　その人々（ひとびと）の命（いのち）こそ　千歳（ちとせ）を延（の）ぶと祝（いお）ふなれ 　　　　[七夕（秋）] 一　万代（よろずよ）の秋（あき）ごとに　君（きみ）ぞ見（み）るべき七夕（たなばた）の 　　契（ちぎ）りは久（ひさ）し行（ゆ）き合（あ）いの　夕（ゆう）べの雲（くも）の上（うえ）にて 二　九重（ここのえ）の庭（にわ）に咲（さ）く　薫（かお）り満（み）ちぬる菊（きく）の香（か）に 　　千歳（ちとせ）の秋（あき）をや重（かさ）ねなん　君（きみ）が齢（よわい）ぞ知（し）るらん 三　治（おさ）まれる御代（みよ）の静（しず）けさは　猶幾千代（なおいくちよ）を聞（き）こゆなる 　　こや松虫（まつむし）の音（ね）に立（た）てて　呼（よ）ばふ声（こえ）にやあるらん 　　　　[榊（冬）] 一　霜八度（しもやたび）おけどなほ　枯（か）れせぬものは榊葉（さかきば）の 　　立（た）ち栄（さか）ふべき蔭深（かげふか）く　まします神（かみ）のきねかも 二　雪降（ゆきふ）れば山里（やまざと）の　冬（ふゆ）ごもりせし草（くさ）も木（き）も 　　匂（にお）ふばかりの春（はる）もまだ　知（し）られぬ花（はな）ぞ咲（さ）きける 三　千早振（ちはやふ）る神（かみ）の在（ま）す　賀茂（かも）の社（やしろ）の姫小松（ひめこまつ） 　　万代経（よろずよふ）とも葉（は）も茂（しげ）み　緑（みどり）の色（いろ）は変（か）はらじ
訳詞	[若菜] １．初春の野原に大勢で出て、若菜を摘みながら、すべての人がとこしえの平和を願う気持ちを、最も良く知っているのは、帝を守っている神であろうか ２．春風になびく柳が、その青々とした枝から緑色の糸を繰り出して長い糸に縒るように細枝を出しているが、そのように万民は、帝の庇護の下に身を寄せ、幾たびも幸せな春を迎えている ３．春には私の家に咲いている桜も満開で、それは何度見てもなお見飽きることがないという気持ちはのどかである [橘] １．宮中の右近の橘はいつも常緑で、その花にいつも変わらずに来て鳴く時鳥の声も、変わりない世を祝うように遠く天まできこえる ２．葉の変わることのないと際の松の木陰の岩根に流れる泉は常に底まで澄み渡り、水面にはいつもその松の緑の影を映している ３．今日、瀬見の小川では木綿をかけた御幣を用いて夏越の禊をしている。この禊をする人々の命が長らえるように祝っているのだ [七夕] １．秋になると七月七日の七夕の雲の上で、七夕の星が行き合って永遠に約束を果たしているのを、君はいつまでもごらんになって欲しい ２．宮中に咲き誇って、庭中に満ちている菊の香に、千年も秋を迎えることを重ねて欲しい帝の長寿の齢を知ることが出来よう ３．天下太平に治まる静かな世の中に、なおイクチヨと君が代の永遠を祝うように聞こえて来るのは、鈴虫が声を立てて呼び交わす鳴き声であろうか [榊] １．何度霜が下りても榊の葉は決して枯れないで緑の木陰も深いが、その木の根のように、立ち栄えるに違いない神に仕える人たちだな ２．山里に雪が降ると、一面の銀世界になったので、まだ寒さのために冬篭りをしている草にも木にも、春の盛りにも見られないような雪の花が咲いたらなあ ３．尊い神を祀った賀茂神域の姫小松は、この世の繁栄を祝うように幾年経っても葉も茂っているので、その緑の色は変わらないのであろう

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