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思ひ川
[オモイガワ]

ジャンル	地唄・箏曲 箏組歌 奥許
作曲者	北島検校？生田検校？
調弦	本雲井調子 下千鳥本雲井調子
唄	一　逢（お）ふ瀬徒（せあだ）なる思（おも）ひ川（がわ）　岩間（いわま）に淀（よど）む水茎（みずぐさ）の 　　かき流（なが）すにも袖濡（そでぬ）れて　干（ほ）す日（ひ）もいつと白波（しらなみ） 二　面影（おもかげ）のつくづくと　忘（わす）れもやらで思（おも）ひ寝（ね）の 　　夢（ゆめ）だに見（み）えで明（あ）けぬれば　逢（あ）はでも鶏（とり）の音（ね）ぞ辛（つらき 三　いつの間（ま）にかは書絶（かきた）えて　隔（へだ）つる仲（なか）となりにけり 　　見（み）し玉章（たまずさ）の文字（もじ）が関（せき）と　名（な）を聞（き）くだにも恨（うら）めし 四　情（つれ）なくも行（ゆ）く人（ひと）の　止（とど）め形見（がたみ）の唐衣（からころも） 　　立（た）つよりいとど我（わ）が袖（そで）　露（つゆ）にぞ萎（しお）れ萎（しお）るる 五　恋（こ）ひ侘（わ）びてただ一人（ひとり）　伏屋（ふせや）の床（とこ）に夜（よ）もすがら 　　落（お）つる涙（なみだ）が音無（おとな）しの　滝（たき）とや流（なが）れ出（い）づらん 六　なかなかに辛（つら）からば　ただ一筋（ひとすじ）に辛（つら）からで 　　情（なさけ）の混（まじ）る偽（いつわ）りと　思（おも）へば深（ふか）き恨（うら）みかや
訳詞	１．逢うときも当てにならず、思い川の水が岩間に深く淀んでいるように、口に出しかねて、秘めた恨みの思いを、手紙に書き流すにつけても、涙に袖を濡らしているが、それを乾かすことができる逢う日も何時かわからない ２．恋人の面影がどうしても忘れることも出来ないので、せめて夢の中でもその面影を見ようと思って寝ても、それさえも見られずに夜が明けてしまうから、実際に逢った時でなくとも夜明けを告げる鶏の声はやはり恨めしく辛い ３．いつの間に手紙を書くことも絶えて、すっかり絶交状態になってしまったのか。手紙の文字が原因で、門司の関所ではないが、二人の間をせくこととなってしまったので、その名前を聞くだけでも恨めしい ４．薄情にも別れていく人を、引き止めることが出来ず、形見として残された抜け殻の唐衣を、切り裁つように立ち去って行くや否や、私の袖は一層涙にしおれる ５．恋い侘びて、ただ独りで粗末な家の床に寝て、一晩中むせび泣くと、涙が音無しの滝のように流れるだろう ６．どうせ辛いなら、ただ一筋に薄情であるほうがましで、そうでなくなまじ愛情の混じった偽りの辛さであると思うと、かえって深く恨めしい気がする

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