| ジャンル | 
							地唄・箏曲 山田流  | 
					
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| 作曲者 | 二世山木検校 | 
| 作詞 | 不詳 | 
| 調弦 | 
								箏:雲井調子 三絃:三下り  | 
						
| 唄 | 
								  あこがれて、月に名のるか時鳥、宵の初音は空にさへ、 しのびかねての言の葉を、よそにもらしてゆふがほの、 垣のへだてとなるならば、後のうき名のたちばなを、 惜しむかひなき夏虫の、光を袖につつまれず、 ひとりこがるるうかひ舟、よるのおもひは篝火の、 まだ明けぬ間に消えはてて、晴れぬ心は五月雨の、 さみだれの滴もかをるあやめ草、 ひくもひくもうれしき君が玉琴。  | 
						
| 訳詞 | 
								月に対し心がひかれて名乗って鳴くのかホトトギス、宵に鳴く初音は広い空にさえ晴れやらず、我慢できなく他所にもらして鳴いていう夕顔、その夕顔の絡んだ垣が互いの仲のへだてとなるならば、あとで浮名が橘の花の香と立つのを惜しむことになる。 惜しんだところで甲斐のない夏虫の光を袖に包まれず、独りで舟を漕ぐように心を焦がして憂い辛い思いをし、舟の寄る夜の思いは篝火の開けないうちに消えてしまって、はっきり主尾よいことにならずじまい。 気持ちは五月雨のしずくと涙が流れて香る菖蒲草である。 菖蒲草の根を引くように弾くのもうれしい君の玉琴の音色であるよ。  | 
						
| 補足 | 
								山田流箏曲。中歌曲。『夏の詠』とも。 合の手には『乱輪舌』の初段と二段とが地として合奏される。 初夏から晩夏にかけての推移にそって情景を歌いながら、縁語や掛詞を巧みに使い、人を思う心情を表現している。  |