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天下太平
[テンガタイヘイ]

ジャンル 地唄・箏曲
箏組歌
表組
別名 天下泰平。雛鶴の曲・住吉の曲・太平楽の曲
作曲者 八橋検校城談
調弦 平調子
一 天下太平長久てんがたいへいちようきゆうに おさまる御代みよ松風まつかぜ
  雛鶴ひなづる千歳経ちとせふる たにながれに亀遊かめあそ

二 人知ひとしれぬちぎりは あさからぬ物思ものおも
  つつむとすれどむらさきの いろづるぞはかなき

三 はかなくもくまなき つきをいかでうらみじ
  とにかくにそでに えぬなみだ夕暮ゆうぐ

四 はなえん夕暮ゆうぐれ 朧月夜おぼろづきよそで
  さだかならぬちぎりこそ 心浅こころあさえけれ

五 住吉すみよしみやどころ かきならすことの
  かみめぐみにめて ぎしむかしかたらん

六 あきやまにしきは 龍田姫たつたひめりけん
  時雨しぐれるたびごとに いろすぞあやしき
訳詞 1.世の中がいつまでも平和に治まっている証拠に、常葉の松にそよぐ風も穏やかで、鶴は千年亀は万年といわれるように、雛鶴はこれから千年もの寿命を得、清らかな谷の流れには万年の齢を重ねる亀がのどかに遊んでいる

2.他人に知られないように結んだ契りは、深い物思いの種であるが、それを包み隠そうとすればするほど、却って表面に現れてしまって人に知られることになるのは、どうしようもないことである

3.はかなくも、あの人の面影を思い浮かべさせられるあの晴れた月を、どうして恨まないでいられようか。何につけてもとにかく袖を濡らして、涙の絶え間のない夕暮れである(はかなくも、あの曇りない月を、どうして恨んだりしたのだろうか。あの人の面影を思い浮かべさせられるのが辛かった所為であろうか。それはとにかく、今は、袖を濡らして、涙の絶え間のない夕暮ればかり送っている)

4.観桜の宴の夕暮れの朧月夜に、源氏は誰とはわからずに内侍の袖を引いて言い寄った。名乗りもせず、ただ扇だけを取り交わして別れたような、はっきりしない契りは、まごころが、浅いように思われるものである

5.住吉神社に参拝して、和琴を掻き鳴らして神に奉納していると、この住吉明神の御恵によって明石の上と結ばれ、また無事都に帰るようになったことが喜びの中に思い出される。過ぎし日のことを懐かしい昔話として語ろう

6.秋の山のこの錦のように美しい紅葉は、きっと龍田姫が織ったのであろう。それにしても、時雨の降るたびごとに、その紅色がますます鮮やかになるのは、不思議なことである
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